前回の呉勝浩『爆弾』に続き、今回も人間の心理を容赦なく抉り出す傑作ミステリーをご紹介します。イヤミスの女王・湊かなえさんが「外見のコンプレックス」と「人々の主観」をテーマに描いた、息をのむような連作短編集です。
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- 著者:湊かなえ
- タイトル:カケラ
- 出版社:集英社(文庫版は集英社文庫)
- 出版日:2020年5月12日(※文庫版は2023年5月19日発売)
あらすじ:一人の少女の死と、遺された人々の「カケラ」
物語の始まりは、ある田舎町で起きた女子高生の自殺事件です。亡くなった少女・横網八重子は、学校一の美女でしたが、太っていることに強いコンプレックスを抱えていました。彼女は大量のドーナツに囲まれて命を絶ちます。
美容外科医である橘久乃は、幼馴染の横網から相談を受けたことをきっかけに、八重子の死の真相を知るため、彼女に関わった人々にインタビューを始めていきます。母親、教師、友人、幼馴染……。しかし、彼らが語る八重子の姿は、それぞれ全く異なるものでした。人々が自分の都合の良いように切り取った「記憶のカケラ」が集まったとき、衝撃の真実が浮かび上がります。
脳内再生が止まらない!もし実写化するならこの豪華キャスト
本作は、主人公の医師・久乃が様々な人物から話を聞くという「対話(インタビュースタイル)」で進みます。湊かなえさんといえば『告白』や『リバース』など、役者の演技力が光る映像化作品が有名です。もしこの『カケラ』が実写映画化されるなら、誰が演じるべきか、妄想が膨らんで止まりません。
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- 橘久乃(演:松たか子)
物語の聞き手となる美容外科医。冷静でありながら、相手の本音を引き出す鋭さを持つ役どころです。湊作品の原点『告白』で見せた、静かな狂気と圧倒的な存在感を持つ松たか子さんなら、この物語のナビゲーターを完璧に演じてくれるはずです。 - 志緒(演:二階堂ふみ)
久乃に「容姿への執着」を語る重要な証言者。激しい感情の起伏や、美への歪んだ価値観を持つ難しい役柄ですが、演技派の二階堂ふみさんなら、鳥肌が立つような緊迫した対話シーンを魅せてくれるでしょう。 - 八重子の母(演:宮沢りえ)
娘を愛しながらも、無意識に容姿の呪縛を与えてしまっていた母親。美しさと、母親としての歪んだエゴを同時に表現できるのは、宮沢りえさんしかいないと感じます。 - 如月(演:吉岡里帆)
八重子の学校の教師。一見すると生徒想いの善人ですが、その裏にある自己満足や偽善を、吉岡里帆さんが得意とする「人間のリアルな生々しさ」で演じてもらいたいです。
- 橘久乃(演:松たか子)
誰もが持っている「ルッキズム」の刃
本作が恐ろしいのは、八重子を追い詰めたのが「明確な悪意」ではなく、周囲の「良かれと思った言葉」や「小さな偏見」の積み重ねだった点です。
「痩せたら可愛くなるのに」「女の子なんだから綺麗にしなきゃ」。私たちが日常で何気なく口にしたり、耳にしたりする言葉が、一人の少女の心を少しずつ削り取っていく過程は、読んでいて胸が苦しくなります。誰もが被害者であり、同時に加害者になり得るという、現代社会のルッキズム(外見至上主義)への強い警鐘を感じる一冊です。
章を追うごとに、パズルのピース(カケラ)がはまっていく快感と、それによって完成する絵の不気味さ。一晩で一気に読み切ってしまうこと間違いなしの、極上の心理ミステリーです。