現実の狂気と執念の追跡。門田隆将『狼の牙を折れ』を脳内キャストで読む


今回は、フィクションのミステリーを遥かに凌駕する緊迫感に満ちた、戦慄の「実名」ノンフィクションをご紹介します。
50年近く逃亡を続け、死の間際に名乗り出た容疑者のニュースによって、再び日本中に激震が走った「東アジア反日武装戦線」。本作は、彼らが引き起こした史上最悪のテロ事件に命がけで挑んだ、警視庁公安部の刑事たちの執念の追跡劇です。
まずはブログの基本ルールである書誌情報から記載します。
  • 著者:門田隆将
  • タイトル:狼の牙を折れ 史上最大の爆破テロに挑んだ警視庁公安部
  • 出版社:小学館(文庫版は小学館文庫)
  • 出版日:2013年10月24日(※文庫版は2024年8月6日発売)
あらすじ:1974年8月30日、丸の内を襲った地獄
物語(現実の事件)は、日本の心臓部である東京・丸の内の三菱重工ビル前で幕を開けます。昼休み終わりのオフィス街に突如として響き渡った凄まじい轟音。白煙が立ち込める中、割れた無数のガラス破片が降り注ぎ、死者8人、重軽傷者376人を出す未曾有の爆破テロが発生しました。
犯行声明を出したのは、謎の過激派組織「東アジア反日武装戦線“狼”」。自分たちの身勝手な理想を掲げ、一般市民の命を奪うことも厭わない凶悪なグループです。防犯カメラもネットもない時代、手がかりが皆無に等しい絶望的な状況から、名もなき公安捜査官たちが「受けて立つ」と心に誓い、過酷な極秘捜査へと足を踏み入れていきます。
緊迫の公安ドキュメンタリー!もし実写化するならこの重厚キャスト
本作は、徹底した取材をもとに捜査官たちが「実名」で証言しているため、言葉の重みが違います。もしこの昭和の熱い男たちのドラマが、現代の最高峰の布陣で実写映像化されたら……という妄想を爆発させてみました。
  • 公安部幹部(演:役所広司)
    捜査の最前線で指揮を執り、部下たちを鼓舞するベテラン捜査官。数々のノンフィクション作品で圧倒的な説得力を魅せてきた役所広司さんなら、市民を巻き込む理不尽なテロへの激しい怒りと、絶対にホシ(犯人)を挙げるという狂気的なまでの執念を演じ切ってくれるはずです。
  • 若手・中堅の公安捜査官(演:西島秀俊)
    私生活をすべて犠牲にし、地道な尾行や張り込みを続ける実働部隊。西島秀俊さんが持つ、静けさの中に秘めた鋭さと、刑事としての「静かなる熱量」が、地道で過酷な公安警察のリアリティを100%引き出してくれます。
  • 土田國保・警視総監(演:佐藤浩市)
    事件当時、警察組織のトップとして未曾有の危機に対峙した人物。本書では彼の当時の「日記」が初公開されていますが、佐藤浩市さんの持つ重厚な威厳と、組織を背負う男の孤独な苦悩の表情が、ドラマの格をさらに跳ね上げてくれるに違いありません。
  • 主犯格の活動家(演:菅田将暉)
    革命という大義名分に酔い、次第に過激なテロへと傾倒していく若者。一見すると普通に見える若者が持つ、心の歪みや狂気を、菅田将暉さんなら鳥肌が立つほどのリアリティで怪演してくれるはずです。
忘れてはならない、日本が経験した「狂気」の記録
この本を読んで背筋が凍るのは、これがフィクションではなく、実際に私たちの国で、わずか50年ほど前に起きた歴史だという事実です。犯人たちは「正義」を盾にしていましたが、その実態はただの無差別殺人であり、そこにあるのは底冷えするような悪意と独善でした。
しかし、その狼の牙をへし折るために、自らの人生を賭けて闇に立ち向かった捜査官たちがいたからこそ、今の私たちの平和な日常があります。
前回の『永遠の0』とはまた一味違う、地続きの「日本の近現代の歴史と人間の執念」を突きつけられる一冊です。事件の風化が叫ばれる今だからこそ、多くの人にこの文字に刻まれた情熱を受け取ってほしいと思います。