世界を揺るがす中東・イランを巡る緊迫した情勢が連日ニュースを騒がせている今だからこそ、どうしても再読し、ご紹介したい歴史経済ドキュメンタリー小説があります。本屋大賞を受賞し、岡田准一さん主演で実写映画化もされた本作は、エネルギー自給率の低い日本がかつてどのように国際社会と渡り合ってきたかを描いた、不屈の男たちの物語です。
まずはブログの基本ルールである、正確な書誌情報から記載します。
- 著者:百田尚樹
- タイトル:海賊とよばれた男
- 出版社:講談社(文庫版は講談社文庫)
- 出版日:2012年7月11日(※文庫版は2014年7月15日発売)
あらすじ:敗戦の焼け野原から、世界の巨大石油資本に挑んだ男
物語の主人公は、出光興産の創業者・出光佐三をモデルにした国岡鐵三です。敗戦によってすべての資産を失い、莫大な借金を抱えた国岡商店でしたが、鐵三は「一人のクビも切らない」と宣言。ラジオ修理や漁業など、泥臭い仕事で食いつなぎながら、再び石油ビジネスへの復帰を目指します。
しかし、当時の石油市場は「セブン・シスターズ」と呼ばれる欧米の巨大石油資本(メジャー)に完全に支配されていました。日本への石油供給も彼らの胸三寸という絶望的な状況の中、鐵三は驚くべき大勝負に出ます。それが、イギリスと国際紛争の真っ只中にあったイランへ、自社のタンカー「日章丸」を極秘派遣するという命がけの計画でした。
現代のイラン情勢と重なる,歴史のうねり
本作のクライマックスである「日章丸事件」が起きた1953年当時、イランは石油の国有化を宣言したことで、イギリスから海上封鎖(経済制裁)を受けていました。イランの石油を買おうとする船は、イギリス海軍に撃沈されるかもしれないという一触即発の危機的状況だったのです。
この構図は、現在の国際情勢とも強く重なり合います。現在も中東での対立やシーレーン(海上交通路)の危機、各国による経済制裁の応酬によって、原油価格は高騰し、エネルギー資源の大半を中東に依存する日本は常に綱渡りの状況を強いられています。
70年以上前、国岡鐵三は「国際法上、イランの石油を買うことは違法ではない」と確信し、イギリスの威嚇を恐れず突き進みました。そこにあったのは、単なる企業の利益追求ではなく、「イランの窮地を救い、我が国の自立を守る」という、大義と誇りでした。現代のエネルギー危機や地政学リスクを考える上で、これほど教訓に満ちた物語はありません。
映画キャストが魅せた、昭和の男たちの熱き血潮
実写映画版では、世紀の密航に命を賭けた男たちの情熱が、実力派キャストによってスクリーンに焼き付けられていました。
- 国岡鐵三(演:岡田准一)
「海賊」と恐れられ、常識破りの決断で会社を率いたリーダー。岡田准一さんが、鐵三の青年期から90代に至る激動の人生を熱演しました。特に、世界を敵に回してでも「部下と国のために闘う」と決意した際の、凄まじい眼力と風格は鳥肌ものでした。 - 東雲新一(演:吉岡秀隆)
鐵三を支え続けた、国岡商店の生え抜き社員。吉岡秀隆さんの持つ、優しさの中に秘められた芯の強さが、鐵三の無茶な決断を信じて支え抜く店員たちの強い絆をリアルに表現していました。 - 新田辰夫(演:堤真一)
日章丸の船長として、イギリス海軍の包囲網が敷かれた一触即発のペルシャ湾へ舵を切った男。堤真一さんの圧倒的なリーダーシップと、乗組員の命を預かる男の覚悟が、航海中の息詰まるサスペンスを極限まで高めていました。
困難な時代を生き抜くための「羅針盤」
世界情勢が混迷を極め、未来が見通せない現代において、この本は私たちに「リーダーとしての覚悟」や「国を守るとはどういうことか」という強いメッセージを投げかけてくれます。
イギリス海軍の目を盗み、地雷原のような海を潜り抜けて川崎港へ帰還した日章丸の姿は、当時の日本人にどれほどの勇気を与えたことでしょうか。現代の国際ニュースを見つめながら、ぜひこの不屈のドラマを文字で、そして映像で体感してみてください。